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第二回 人生で必要なことは商店街で学んだ

消費生活アドバイザーとして商店街づくりにかかわる私は、9年前まで育児用品メーカーで商品企画にいそしみ、新卒時代は自動車会社で研究職をしていました。

商品企画も、研究職も・・・そして今の商店街の仕事も、「こうだったらいいのに」というアイデアを出し、調べ、実験/検証し、調整する・・・30年近く同じ動きを、現場を変えて繰り返して仕事をしています。

 

瞬間的にわいてくる温泉のように、アイデアが浮かんだら試さずにはいられない。どちらかというと変わり者。そんな気質の私をそのままに受け入れ、育ててくれたのが商店街です。

 

私の両親は共働きで、当時近くに0歳児を受け入れる保育園などありません。預け先に困った両親は、商店街のお店のおばあちゃんに生後二か月で私を託しました。

預けられた仕立物屋を起点に、商店街をわが物顔で闊歩する私。駄菓子屋から美容院、金物屋に豆腐屋の店先までもが遊び場です。サラリーマン家庭の私には、商店街で見るもの聞くものが刺激的。売り買いをする店主さんとお客さんのやりとりや、おじさんが子ども相手にする政治談義。強面のおばあちゃんに叱られない方法を編みだし、お手伝いをしてお駄賃をせしめる…。商店街の毎日は、リアルなキッザニアさながらに刺激的でドラマチックでした。

 

子ども軍団が基地を作り作戦会議。街中の大人に見守られながら、いろんな現場を見て、思いついたアイデアを試し遊ぶ毎日です。

大人になって躊躇なく新しい研究や新しい市場の商品企画を楽しむ原体験が、商店街にはありました。人を知り、世の中を知り、アイデアを試し、きれいに後始末をして帰る…。見守りの中で安全に。お金もかけず、親からも干渉を受けない…商店街は天国。世の中は、悪いところではない…人への信頼を育ててくれたのも商店街でした。

 

その後、社会に出て仕事と子育てに忙殺されたころ、私は商店街の存在をすっかり忘れていました。

 

郊外に住み、買い物時間を短縮するために宅配やスーパーでまとめ買い。夕方は世間話もそこそこに、駅から保育園までダッシュする日々。仕事の縁、子育ての縁があれば、地縁はなくても困らない…と鷹をくくっていたとき、娘が思春期を迎え体調を崩しては学校を休みがちになりました。

 

「学校に行かないと、家族以外会話する機会も無くなるんだね」「今日は、お買い物で店員さんと話ができて良かった」という言葉を聞いて、衝撃。

 

自分の幼い頃、一歩外に出れば商店街がありました。「調子が悪いの大丈夫?」「道草しないで早く帰りなさいね」声をかけてくれる大人は当たり前にいてくれた。けれどその日常は、もはや当たり前にあるものではなくなっていた!

子どもには、学校や家族以外の…異質な人とのふれあいが必要です。失われつつある地縁を日常の中でお手軽に育める場所として、人が育つ場所として、商店街が必要なのだ!とはじめて気が付きました。その時から、私の商店街デビューがスタートしました。

 

お買い物は一番身近な社会活動です。

商店街のお買い物にはモノの売り買いだけでなく、店主の技や知識をやり取りする場。会話をしないと魅力は半減、コミュニケーション力を鍛える場でもあります。

 

商店街でのお買い物では、すべてを家族だけで背負い込まず、上手に人の手を借りることを教えてくれました。

「遠い実家より近くの商店街」商品の選び方から、晩御飯の献立まで。経験豊かな店主の知恵を借りれば、お値打ちな買い方も教えてくれます。

仕事をしながら家庭を守る先輩として、急な介護に直面した時は何軒かの店主さんが知恵を授けてくれました。

 

商店街は、モノのお金以外の暮らしの価値をやり取りする場 。小さなお買い物を重ねて、信頼やつながりを育む場でもあります。

子育てや、仕事、学校を離れて素の自分に戻り、人や街に出会える…わずか数分のお買い物で!!

 

商店街の衰退が著しい中で、今ある街の豊かさを子ども達の時代にも残したいと私は願っています。人にやさしい商店街は、時代の荒波から子ども達や孫達の世代を守ってくれるはず生きたセーフティネットです。

雇用の先行きが見えない中、商店街には新たな雇用や、新たな地域経済を回す可能性もあります。

私たち一人ひとりが「どこで何を買うか?」を選ぶことは、 どんな未来を選択するか?につながります。

 

世代のギャップを越えて、商店街を創造の温室にする。

人生を教えてくれた商店街を舞台に、私の新しいチャレンジがはじまりました。

 

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