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第四回 小さなローカルマーケティング

2007年に育児用品メーカーを退社したとき、社会的な課題・・・特に地域の課題を、マーケティングのアプローチで解く「ローカルマーケティング」をしたいと思いたちました。

 

ローカルマーケティングとは、企業の「新しい市場を創る活動(マーケティング)」とは違い、「地域の人々による、地域の人々のための新しい市場を創る活動(マーケティング)」と、私は考えています。

 

メーカー時代の経験で、企業が消費者に新しい商品やサービスを提供するために膨大なコストやエネルギーをかけ市場開拓をする実情は知っていました。その反面、流通や自社内など変化する時流に追いつく課題が多く・・・顧客が本当に望むことから離れてしまうジレンマがあることも知っていました。

 

「消費者視点でローカルマーケティングを支援する専門家になりたい」と消費生活アドバイザーの資格をとった2009年。知人の紹介で、とある商店街のグループインタビューをお手伝いすることになりました。

 

商店街・・・育った子ども時代のしあわせな印象を持ちながら聞いたユーザーの声は、時に辛辣で厳しいものでした。「かつて華やかで愛し利用した商店街が、さびれている。しかも自分たち顧客を見ていない」怒りにも近いユーザー感情の裏側に、「もっと顧客を見てほしい。つながりを持ちたいし、応援もしたい」という熱い本音が隠れていました。

 

 商店街も企業と同じ。

 流通やお家事情で時流に追いつく課題が多い。

 しかも顧客が見えていない。

 

かつて馴染んだ世代の常連客とは、見た目も、暮らし方も、コミュニケーションも違う新しい顧客へのアプローチが必要なのに、二の足を踏む店主の姿がありました。

 

 誰も見たことがない新しい市場を創る。

 雇われ者ではなく、雇い主として考えるとハードルが高いかもしれない。

 

理屈を言っても、現実に「新しい市場は自分たちで創れること」を目の当たりにしないと、人は動けない・・・そんなことを考えていた2010年。内閣府地域雇用創造事業の一環として行われた社会起業家育成のビジネスプランコンぺ*1に採択*2を受け、実際にプランを実行することができました。

 

事業を実行する商店街を探していた時に、ビジネスプランコンペに別なテーマで参加していた友人が・・・「それならいい商店街がある。私も応援するよ」と声をかけていただき、たどり着いたのが杉並区和田商店街です。

 

 商店街という身近な場所を、住む人や商う人の視点で「本当に望む姿」に変えていく。

 マーケティングとは新しい市場を創ること。

 商店街の課題は、店主と顧客の高齢化。

 若い世代を巻き込んで、商店街の新しい楽しさを作らなければ未来はない。

 

2010年9月に商店会の役員会で熱く語る私とは裏腹に、当時の店主さんたちの反応は冷ややかでした。

 「そんなに力を入れても、この商店街で5年後にお店が残る見込みがあるのは数件」

 「若い世代が楽しめるお店は、今でもほどんどない」

 「閉じようとする街。なぜ、寝た子を起こすの?」

 「これであなたにどんなメリットがあるの?」

 「日中は商売を回すので手一杯。手伝えないよ」

有名で実績のある専門家ならばいざ知らず、無名の、しかも女性の、よそ者の私。

マーケティングという言葉も、市場を創るという意味合いも通じず、胡散臭い。

小さな商店街の壁は、予想以上に鉄壁でした。

 

企業でしていたインタビューや分析、プレゼンが全く通じない。

新しい単語や文脈をご理解いただく時間もゆとりもない。

 

ローカルマーケティングを具体化するために、まったく新しいアプローチや手法を編み出す必要がある。そんなときに思いついたのが「赤ちゃんを連れた親子が、商店街と出会う(商店街デビュー)をして、店主と親子が協働し住みたい商店街をつくる」というストーリーでした。*3

 

折りしも商店会の役員会が行われていたのは、和田帝釈天です。

江戸時代から子安の鬼子母神と勝負の神様帝釈天が祭られ、代々の地域の人々に愛され守られてきた場所。

このプロジェクトが、本当にこの街のためになるなら・・・

子々孫々の親子が笑顔で育ちあう場になるために役立つなら・・・

鬼子母神と帝釈さまがきっと後押ししてくれるはず。

 

店主さんたちをお願いし倒し、2010年11月に親子で街デビューワークショップがはじまりました。

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