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第六回 母たちがシビレる店主の背中

昔ながらの商店街を親子が関わり盛り上げる…親子で街デビュープロジェクトを推進する起爆剤は、若い子育て中の母たちの力です。

 

杉並区和田商店街は、昭和40~50年代をピークににぎわいを見せました。購買客の中心は、徒歩圏内に住む専業主婦たち。夕方には買い物かごをさげて、商店街に繰り出しました。

 

当時は、魚屋に八百屋、酒屋、金物屋、銭湯と、徒歩圏内に専門店が並び、店の数だけ商品やサービス…技と知識と熱気が集まる場でした。店主同士が辛口の意見も言い合える常連客でもある。日々の買い物の中で繰り広げられる店主と顧客の本音のやり取りが、商売を研き、味を育てていました。

 

 顧客の顔を思い浮かべて、仕入れる目利き。
 店に並んでいない商品も、顧客の声を拾い上げて提供する調達力。

 展示会に足を運び、ターミナル駅の専門店に負けない鮮度を誇る品揃え。

 

安さや速さの陰で、見落とされているだけで…住宅街の中に生き残る商店街には、プライドに裏打ちされた隠れた一流が今も残ります。

 

今では共働き家庭が当たり前になり、商店街の成長を支えてきた主婦の姿は様変わりしました。しかし、時を越えて、赤ちゃんを抱えた母たちが商店街に「出会って」みれば、長年地域の人たちに愛され大切にされてきた「豊かさ」は確実に伝わるから不思議です。

 

母たちは商店街に出会うことで、「何でも自分でやろうとしなくても大丈夫。信頼できるお店の力を借りたらいい」と、人にゆだね支えあう暮らしを体感しました。

専門店として商売を研くプロの姿勢を商品や店主のあり方で感じとり、質を見極める目を感じています。

何よりも「子育てしながら働く人生の先輩」として、店主の存在に尊敬できる大人の姿を見いだす母たちも少なくありません。

 

世代や価値観を越えて、「真摯な想い・行動」は人を動かします。

「買い物は、安さと早さが大切」と思ってきた、ちゃきちゃきの現代っ子の母たち。デパ地下よりお安く、スーパーより質がいい…この商店街でのお買い物を選ぶことは合理的な選択で、実は納得感がある。

仕事を終えてお迎えに走り、帰りが遅い夫を気遣いながら小さな子どもと囲む夕食…商店街の馴染みのカフェに立ち寄れば、「おかえりなさい!」と笑顔で迎えてくれるオアシスがある。

今にあっても商店街は天国であり、天国たりうる可能性がある場所だと私は思います。

 

親子で街デビュープロジェクトが、6年を越えて持続して新たな参加者を惹き付けるのは、商店街と新しい顧客である親子が様々なコミュニケーションを真摯に重ねた賜物です。

 

とはいえ、人はなかなか期待通りにはならないもの。

6年の時間を重ね…ちょっぴり苦い思いも味わいながら、あきらめたくもなりながら…あきらめきれずを期待をする中で感じる「優しさや慈しみ」「変化」が、商店街のお買い物の醍醐味だと思います。

完全すぎる日常が多い中で、人が作る素晴らしさと不完全さを味わい…ゆえに肩の力が抜ける地元の商店街が光る。息がつまりそうな日常の中に、新しい生き方を感じさせてくれる場所が商店街です。

 

毎日のささやかなお買い物が、ドラマチックでプライスレスな経験に変わります。

 

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*1:和田商店街中央にある濱海苔店。自家製海苔は手ごろな値段で親子に人気です