第十三回 100%を狙わない

街に昼間いる人たち

働く人々が増えて、昼間の商店街は静かになった。専業主婦が買い物かごを提げ、夕方の商店街を歩く姿は遠い昔のことだ。

昼間の商店街を歩くのは、高齢者が中心…そう決めつけるのは、話が早すぎる。

 

昼間も街に居るけれど、商店街に出会えていない「見えない顧客」がいる。

 

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人口データ

2010年9月、親子が商店街にデビューして持続的な街の活性化を図る…というアイデアを商店街に打診した時、店主たちの反応は冷ややかだった。

「この街に子連れはいない」

「仮にいたとしても、若い世代に面白い店はない」

「子ども連れのマナーに戸惑う」

「親子と商店街…いいことがあるの?」

 

自治体で公表している人口データを見てみれば、商圏を半径500m以内とした場合3万人を超す人々が暮らしている事実があった。

店主が目を向ける常連客の高齢者は、高齢化とともに減っている。目を向けていない顧客の掘り起こしが課題なのだ。

 

その一方、データから商圏内で毎年赤ちゃんが200人ほどが生まれていることも分かった。働く人々が増えているとは言え、乳児を育てる時期は親子が地域で過ごす時間が確実に増えるはずだ。

 

子ども達を中心に、その親世代…祖父母世代。

赤ちゃんを軸に「日常的に商店街を利用する暮らし」をつくることで、商店街は新しい利用者を増やすことができる。

 

100%を狙わない

商店街×親子をつなぐ親子で街デビュープロジェクト。最初のターゲットは、赤ちゃんを連れた地域の親子20組に商店街デビューをしてもらうことだった。

200人の10%、20組が「この商店街で買い物がしたい!」「また来たい!」と思う機会を用意することで、「あの街で何かがはじまろうとしている」期待感が生まれる。

 

100%を狙わない。

これも最初から決めていた。

 

人の価値観は多様で、その時々に変化もする。

少数派の共感が『実際にお店を利用して』はじめて良しとする…経験の連鎖なくして拡がりはない。

受け入れる商店主の立場で見ても、今まで意識していない顧客層に100%を狙い働きかけるにはハードルが高い。

 

20人に商店街の魅力を伝え、回や時間を重ねることで、年齢層をまたいだ厚いファン層が育つ。

20人に確実に魅力を伝えることができたら、20人を起点に街の魅力を味わえる、ゆるやかな人のつながりが拡がる。

20人が商店街の魅力に気づき、足げく利用をし始めたら・・・重い店主の腰も上がる。

 

大がかりなイベントでなく、バント10回であたりをつかんで塁に出る。

商店街の持続的な成長をゴールとするならば、ホームランを狙うより、一人一人が当たり所をつかんで誰でも塁に出れるチームになることが重要だ。

100%を狙わない効用は、意外に多くある。